2013年6月15日土曜日

* おわんや巧 @ 京都 * 6/20(木) ~ 6/30(日) *




6月20日(木)から6月30日(日)まで京都の " おわんや巧 " にて " 北原 久・進  漆芸展 " を開催いたします。

京都はわたしにとって、特別な想いのある懐かしい場所です。

わたしの父である北原久は、1986年から1987年にかけて行われた京都金閣寺の昭和大修復の際に漆工部主任を務めさせていただいておりその間の2年間を京都で過ごしました。

その頃長野県の小諸で木工の修行中だったわたしは父の仕事を一目見たいと思い、午後7時頃にその日の仕事を終えると原動機付バイクで小諸を出発したのでした。

夜通し走って朝6時頃に京都に着いて金閣寺を見た時のすがすがしい気持ちは今でも色あせることなく、昨日のことのように思い出されます。

その後わたしも京都に長期滞在しながら父とともに金閣寺の修理にたずさわるようになりました。

日々の仕事。木曽の人間には堪える京都の夏の暑さ。休日の日課だったバイクでの京都散策。

今となってはそのすべてが、かけがえのない大切な思い出です。

今回は父との二人展のために京都に向かいます。

今回の作品展では茶道具や日々の暮らしの器に花器、そして整理小箪笥、丸膳といった小家具や厨子など、さまざまな作品を展示いたします。

6月20日(木)〜6月22日(土)は北原進が、そして6月23日(日)〜6月25日(火)は北原久が在廊いたしております。

ぜひ御高覧いただければ幸いです。   北原進







北原進のこと





漆工と木工の仕事をしていた祖父から幼少時に"ものづくり"の楽しさを教わり、釘と金づち、そしてノコギリがあれば何でも作れると思っていた進は、5歳になるころにはこれらの道具を用いていろいろな"もの"を木で作って遊んでいました。

そして独学で多彩な漆工技法を身に付けて作品作りをしている父、北原久の背中を見ながら成長するなかで、自然と木漆芸の道を志すようになりました。

1986年から1987年にかけて行われた、京都金閣寺の昭和大修復の際に漆工部主任を務めた父とともに金閣寺の修理にもたずさわった経験からは、妥協しない仕事の姿勢を学びました。

木工の仕事と漆の仕事は分業でおこなわれるのが通常ですが、進は挽物、指物、刳物といった木地作り(木工)の仕事から漆の仕上げまでの全ての工程を一貫して自分の手で行い、自らデザインした作品をかたちにしていきます。

効率がものを言うこの時代にあって、彼の仕事のスタイルはとても効率が良いとは言えず、時代に逆行しているかのように思えるかもしれません。でもそんな時代だからこそ、大切な人たちと過ごすなにげない日々の暮らしを暖かく、やさしく彩り、安らぎを感じていただけるものを、コツコツとした手仕事で作っていきたいとの想いで日々仕事にむかっています。

木、漆、貝、麻布、錆土など、北原漆工房で作られる作品はすべて自然の恵みからできています。塗った漆を乾かすのもまた自然の力。温度・湿度によって乾く時間や仕上がりの色まで変わってきます。

木と向き合い、漆と向き合うという自然とのコミュニケーションのなかから作品が "かたち" を現した時、それを生み出す自分という存在もまた自然の一部であることを気づかされるようです。木地作りから塗りの仕上げに至るすべての工程を自分の手で行うからこそ気づくこと、感じることがある・・・そんな気がするのです。


略歴:
1966       信州木曽に生まれる。
     高校卒業後、木工家具作りの修行をする。
     後に父である北原久のもとで漆塗りの仕事を始める。
     木地作りをしながら漆の仕上げまで一貫した作品作りをしている。
1994〜 第68回国展より出品し、以後第81回国展まで連続入選
1998  第13回国民文化祭大分市実行委員会会長賞受賞
1999  第73回国展・工芸部奨励賞受賞
2005  第79回国展・工芸部新人賞受賞
2006  国画会準会員推挙
2009  長野県工芸美術展・奨励賞受賞
2010  長野県工芸美術展・市民タイムス賞受賞
2011  長野県工芸美術展・長野県知事賞受賞
2012  東京都美術館 都美セレクショングループ展公募第1回
     「月火水木金土日 〜 想いを繋ぐ 〜 」出展
2013  東京都美術館 都美セレクショングループ展公募第2回
    「想い、巡る。」出展

*各地の百貨店、ギャラリーにて個展を中心に活動中。 

*取り扱いギャラリー、ショップ (常設)
 東京:クロス&クロス 東京都目黒区自由が丘 2-14-11  tel 03-6421-3086
 大阪:漆ギャラリー 舎林 大阪市阿倍野区阿倍野筋 2-4-41  tel 06-6624-2531
 京都:おわんや巧 京都市南区東九条烏丸町 24-2 tel 075-671-5121 





祖父から幼少時に"ものづくり"の楽しさを教わり、

2013年6月11日火曜日

父、北原久のこと


北原久  作


進の父、北原 久は松本に生まれ、16歳の時に友人に誘われて訪れた木曽平沢で漆に魅せられて以来、漆工一筋に60年の道のりを歩んでまいりました。

職人として誠実な仕事を積み上げてきた中で、1986年から1987年にかけて行われた京都金閣寺の昭和大修復の際には、漆工部主任を務めさせていただきました。

その様子はNHKの " プロジェクトX 挑戦者たち 金閣再建 黄金天井に挑む " で放映されましたので、ご覧になられた方もいらっしゃるかもしれません。

NHK出版 プロジェクトX 挑戦者たち
壁を崩せ 不屈の闘志 〜 金閣再建 黄金天井に挑む 〜



父は塗りの職人としての仕事をしながらも、堆朱彫や彫漆、そして螺鈿、蒟醤、蒔絵などのさまざまな技法を独学で身につけて自らの作品作りを始めました。

そして今ではそれらのさまざまな技法を駆使した父独自のやり方で、独創性に富んだ作品作りをしています。

作品を飾る技法としては彫漆を得意としており、棗や茶箱、文庫などに花や木などの自然のものをモチーフとしたデザインを施しています。

また香合などは堆朱彫の技法により、漆を何層にも重ねて作った漆の板から形を掘り出してつくります。




漆工の作業はさまざまな工程からなり、その工程ごとに分業化されているのが通常ですが、父は下地から上塗り、そして加飾までの全行程を自らの手で行い、堅牢で美しい作品を仕上げています。

華やかな作品をはじめとして根来仕上げのシンプルな作品まで、多彩な作品作りをしています。






      略歴:
      1939年生まれ
      中信美術記念賞
      信州美術会々賞
      国画会新人賞
      長野県代表全国選抜展出展
      1986年 金閣寺修復工事漆工部主任
      長野県より文箱制作依頼
      彫漆野菊紋文箱 天皇陛下に献上
      彫漆勿忘草紋文箱 皇太子殿下に献上
      NHK「金閣甦る」に出演
      NHK「プロジェクトX金閣寺」に出演
      国画会元会員











北原漆工房 北原久・進 漆芸展 @ 木曽漆器祭 in 2013


北原漆工房ではデザインはもちろん、木地(木工)の仕事から漆の仕上げまでのすべての工程を、北原久、進の二人で行っています。


漆器祭での " 北原久  木漆芸展 " も無事に終了し、ほっと一息ついています。

北原漆工房では、木地(木工)の仕事から堆朱彫や彫漆、蒟醤、蒔絵などの加飾までのすべての工程を北原久、進の二人で行い、日々ものづくりに励んでいます。

ここ数年、漆器祭の期間中のみ親戚の家を借りて作品展を開催していますが、毎年ご来場くださる方々にお会いできることはとても嬉しく、明日への活力になります。

また今年はじめてご来場くださった方々にも " ぬりもの " の魅力を感じていただけたなら、こんなに嬉しいことはありません。

" 元気 " とはいろんな方向からやってくるものだと思いますが、ひとりひとりの作り手が元気で産地が元気になり、日本のものづくりの原点ともいえる工芸が元気になって、それが日本の元気につながっていくことを願いながら今日もコツコツと仕事に励んでいます。

次回の作品展は、6月20日より京都にて開催いたします。

金閣寺の修理のために父と進が長期滞在していたことのある京都は、わたしたちにとって思い出深い特別な場所です。


2013年6月3日月曜日

第48回 木曽漆器祭 * 2013年 6/7(金)~6/9(日) *


北原進が生まれ育った木曾平沢という町は、漆器産業を生業とする人々が集住する全国でも珍しい地域です。

伝統的な町並みの風情を今なお色濃くとどめ、漆工という伝統工芸の職人町としては日本で唯一「国の重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されています。

全国にある漆器産地の多くは大名などの庇護の下に発展してきましたが、中山道沿いに位置する木曽漆器は一般市民が使う生活用具としての漆器を作って発展してきました。

しかし、日本の伝統工芸品としての漆器産業の規模は、生活様式の急激な洋風化にともない1991年頃をピークに縮小しています。

この地域の漆器産業も例外ではなく、縮小してきているのを肌で感じています。

自然の恵みである木と漆。漆器産業は21世紀の循環型経済社会の実現を目指すなかで、その主旨を体現する産業であるとわたしは思います。

漆器店、職人、そして作家として自らの表現を追求する者。日々、それぞれの方向性で頑張っているみんなが一丸となって産地をもり立てようとするとりくみのひとつに、今年で第46回をむかえる漆器祭があります。

ちょうど進が生まれた頃に始まった祭りで、今年の日程は6月7日(金) 〜 9日(日)。

北原漆工房も町通りの親戚の家を借りて、北原久北原進の二人展を開催し、みなさんに “ぬりもの” の素晴らしさを知っていただけるよう努めたいと思っています。

日々の器から茶道具に厨子などのさまざまな作品を展示いたします。

信州にお越しの際はぜひお立ち寄りください。


北原漆工房 北原久・進  漆芸展
2013年6月7日(金)〜9日(日)
場所:木曽平沢、町通りの歯医者さんの向かって左隣