2013年8月9日金曜日

デザインのこと




北原進が生まれ育った木曽地域は香川県と同じくらいの広さがあり、そのうち93%ほどが森林でしめられている自然豊かな地域です。

進が作品を制作するときになにからインスピレーションを得ているのかというと、それはいつも身近にある信州の自然です。

高校卒業後、バイクが好きでよくツーリングに出かけていた進は、白いヘルメットを買ってきてはそれに直接アクリル塗料で好きなデザインを描き、飽きたらまたその時々の好きなイメージにペイントし直すということを繰り返していました。そのときラフスケッチや下絵などは描かず、ヘルメットの上に直接、直感でデザインを施し色をのせていきます。

上の画像は水から得たイメージをもとに自分でデザインしたバイクのヘルメットで、今から20年前のものになります。自作のヘルメットから後日自分でおこしたスケッチをもとに、メーカーであるSHOEIさんが公募展の副賞として作ってくださったこのヘルメットは、今も現役で進の身を守ってくれています。






そしてこの画像の上の作品は"流れ"からイメージを膨らませて2010年に制作した"流線紋鉢"です。素材や技法が違っても、こうして並べてみると20年近くたってもかわらない "なにか" が進の中に流れているような、そんな気がしてきます。

進は木地作り(木工)の仕事から漆の仕上げまでの全ての工程を一貫して自分の手で行い、自らデザインした作品をかたちにしていきますが、その工程でもやはり下絵やラフスケッチなどは描かず、自分の中のイメージをもとに木取りをした材に目印となる線を描きながら制作するというスタイルでしごとをしています。信州の自然から日々うけている恩恵が自分のなかに蓄積し、それが直接かたちになって出てくるような感覚。

教育機関で "ものづくり" を学んだ経験のない進はデザインもなにもかもすべて我流で、これまでテーマやコンセプトといった事柄を特に意識して制作するということもありませんでした。今秋の展覧会では自分の中に新らしい引き出しをみつけ成長できたらと、楽しみながら取り組んでいます。