2013年6月15日土曜日

北原進のこと





漆工と木工の仕事をしていた祖父から幼少時に"ものづくり"の楽しさを教わり、釘と金づち、そしてノコギリがあれば何でも作れると思っていた進は、5歳になるころにはこれらの道具を用いていろいろな"もの"を木で作って遊んでいました。

そして独学で多彩な漆工技法を身に付けて作品作りをしている父、北原久の背中を見ながら成長するなかで、自然と木漆芸の道を志すようになりました。

1986年から1987年にかけて行われた、京都金閣寺の昭和大修復の際に漆工部主任を務めた父とともに金閣寺の修理にもたずさわった経験からは、妥協しない仕事の姿勢を学びました。

木工の仕事と漆の仕事は分業でおこなわれるのが通常ですが、進は挽物、指物、刳物といった木地作り(木工)の仕事から漆の仕上げまでの全ての工程を一貫して自分の手で行い、自らデザインした作品をかたちにしていきます。

効率がものを言うこの時代にあって、彼の仕事のスタイルはとても効率が良いとは言えず、時代に逆行しているかのように思えるかもしれません。でもそんな時代だからこそ、大切な人たちと過ごすなにげない日々の暮らしを暖かく、やさしく彩り、安らぎを感じていただけるものを、コツコツとした手仕事で作っていきたいとの想いで日々仕事にむかっています。

木、漆、貝、麻布、錆土など、北原漆工房で作られる作品はすべて自然の恵みからできています。塗った漆を乾かすのもまた自然の力。温度・湿度によって乾く時間や仕上がりの色まで変わってきます。

木と向き合い、漆と向き合うという自然とのコミュニケーションのなかから作品が "かたち" を現した時、それを生み出す自分という存在もまた自然の一部であることを気づかされるようです。木地作りから塗りの仕上げに至るすべての工程を自分の手で行うからこそ気づくこと、感じることがある・・・そんな気がするのです。


略歴:
1966       信州木曽に生まれる。
     高校卒業後、木工家具作りの修行をする。
     後に父である北原久のもとで漆塗りの仕事を始める。
     木地作りをしながら漆の仕上げまで一貫した作品作りをしている。
1994〜 第68回国展より出品し、以後第81回国展まで連続入選
1998  第13回国民文化祭大分市実行委員会会長賞受賞
1999  第73回国展・工芸部奨励賞受賞
2005  第79回国展・工芸部新人賞受賞
2006  国画会準会員推挙
2009  長野県工芸美術展・奨励賞受賞
2010  長野県工芸美術展・市民タイムス賞受賞
2011  長野県工芸美術展・長野県知事賞受賞
2012  東京都美術館 都美セレクショングループ展公募第1回
     「月火水木金土日 〜 想いを繋ぐ 〜 」出展
2013  東京都美術館 都美セレクショングループ展公募第2回
    「想い、巡る。」出展

*各地の百貨店、ギャラリーにて個展を中心に活動中。 

*取り扱いギャラリー、ショップ (常設)
 東京:クロス&クロス 東京都目黒区自由が丘 2-14-11  tel 03-6421-3086
 大阪:漆ギャラリー 舎林 大阪市阿倍野区阿倍野筋 2-4-41  tel 06-6624-2531
 京都:おわんや巧 京都市南区東九条烏丸町 24-2 tel 075-671-5121 





祖父から幼少時に"ものづくり"の楽しさを教わり、