2013年7月30日火曜日

じいちゃんの糸巻き * 原点 *




作家紹介のところでも触れましたが、北原進は幼い頃から木でなにかしら"もの"を作って遊ぶのが大好きでした。

きっかけは漆工と木工の仕事をしていた祖父から、この凧の糸巻きをもらったことでした。

これは今から100年ほど前、進の祖父が子供の頃に自分で作ったものです。

小さな進が凧揚げをして遊べるよう、手直しをしてくれている祖父の様子をよく憶えているそうです。

それはとても楽しい記憶で、進も木でいろいろな"もの"を作って遊ぶようになりました。

といっても、5歳になるかならないかの子供が釘と金づち、そしてノコギリを使って遊んでいたわけですから、漆工の父からは「なにやってるんだ!!」と怒られてしまいます。

そんなとき祖父が「おれは進がなにか作っている姿を見るのが好きだ。好きにさせてやれ。」と言って、進にその"ものづくり遊び"を続けさせてくれたのです。

これが北原進の原点。

それから現在に至る過程で、楽しい遊びだった"ものづくり"は仕事になりました。

作家として作品制作にとりくむことができる日々は大きな悦びに満ちたものであると同時に、苦悩のようなものも与えてくれます。

迷ったとき、苦しくて立ち止まりそうになったときには、この原点に立ち戻って力をもらい、また歩き出す・・・"じいちゃんの糸巻き"は、北原進にとってそんな原動力になっているようです。